具体的に、それでは、どうすれば真の営業力がつくかと言えば、簡単なことで、『多様性』に目を向けることである。まず、欧州をUSAや中国、日本のように、『一つ』と考えるのは、止めると言うことである。そして、コミュニケーションラングエッジを統一するのを止め、地域性を大切にすることである。地域性を大切にすれば、地域に密着した営業ができる。確か、昔、日本でも、「地域に密着した営業」が叫ばれた時期があったと記憶している。それなのに、日系企業は、欧州では管理のし易さを取って、日本での教訓を実践していない。例えば、「組織の文鎮化(横型)」を叫ぶ割には、「地域の文鎮化」はせず、ハイラルキー(Hierarchy)の縦型で、欧州本店ないしは日本の本社に集中させ、営業も含めて管理運営しようとしている。「多様性」は、管理をし辛くさせるが、宝の宝庫である。日系企業の今の経営の傾向は、あまりにも管理、管理で、創造性が生まれなくなっているのではと、ついつい思ってしまう。以前、日本経済新聞に「管理が仕事をやり辛くしている」と言う記事があったが、その通りだと頷きたくなる。本来は、「木の根」のように、見えないが重要で、必要不可欠なものである管理が、目に見える存在になっているのではないだろうかと思う。土の表面に出た根は、歩く人の邪魔をしたり、道路の舗装を破壊したり、問題を発生させるようになる。今の日系企業の欧州管理体制は、まさにそんな状況と言えるのではないだろうか。そこには、営業力が向上する機会はない。 少し批判的な表現になっているが、日系企業には、今、この時点で、再度、方向性を見直してほしいと考える。さもないと、欧州の失敗を、そのうちアジアでも繰り返すことになり、日系企業はこれ以上成長も、継続も出来なくなってしまうのではと恐れるからである。製品力は高ければ高いほど良いのは当然だが、営業力も高くなければならない。その営業力が何なのかを、もう一度日系企業が、全世界の企業に先駆けて考え、対応する必要があると考える。今がチャンスである。
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日系企業の欧州戦略の失敗イコール『営業力の欠如(貧弱さ)』の認識(その1)
日本の企業のTOPは、自社の欧州戦略が成功している、または、成功したと思っているのだろうか?近年、多くの日系企業が欧州から撤退しているが、それは、環境変化による仕方ないことなのか?マネージメントの観点から、そんな疑問について考察をしていきたいと考える。 現在、日系企業の生産工場(製造業)の欧州撤退は、Globalizationの一つの結果として、受け止められ、進められている。『安く作れるところで大量に作ってコストを下げ、持って来れば、商売ができる』と考えているからである。しかし、本当に、その考え方は正しいのだろうか? また、製造業以外でも、日系企業は、撤退しないまでも、欧州で事業を拡大ができずにいる。なぜなのだろうか? 結論から書くと、日系企業の営業力の欠如(貧弱さ)が、生産工場の撤退や欧州での事業拡大ができない原因になっていると言えるのではないだろうか。決してGlobalizationのせいだけではない。日系企業の営業力は、製品の品質とコストに支えられて成り立っているため、日系企業は純粋な「営業力」を兼ね備えていない。そのために、「営業力」を持つ欧州の企業には勝てないと言うのが、真の原因である。欧州には、『安く作れるところで大量に作ってコストを下げ、持って来れば、商売ができる』とは言えない背景がある。その背景とは、『多様性』のことである。欧州は、日本、USA、中国のように一つの国ではない。小さな国々の集まりで、言葉も、文化も、そして、歴史も異なる人々が存在する地域である。そこでは、時として、一括した売り方ではなく、その地域、地域に則した売り方が要求される。しかし、日系企業は、欧州をあたかもUSA(や中国)のように考え、中央集権型の管理体制下の営業しか試みていない。否、昔、各国に任せたら、管理が上手くできずに、費用がかさみ失敗したと言う経営者がいるかも知れない。しかし、それは、最初、各国それぞれで運営してきた拠点を、欧州共同体として扱おうとしたために起こった失敗であり、まさに欧州を一つの国と捉え、扱ったための失敗で、中央集権型の管理体制を敷いたためである。 更に続けると、真の意味で、各国に営業活動を任せきった日系企業は、過去に存在しない。確かに、現地生産に基づき、各国に任せるとした時期はあったが、実際には、日本からの強い管理体制下で日本に依存しながら全ての運営がなされていたと言える。その時代の営業は、日本のやり方を現地人にやらせていた形で、今もそのやり方が継承されているだけである。まさに、『振り』に過ぎない。そして、欧州では、地域に密着した営業が地道に行われることがどこよりも要求されるのに、それが無視され、地域性を殺して、営業活動が行われている。これでは、欧州で、売れるはずがない。例えば、日本では、従業員からの提案を求め、その提案を重視するのに、欧州では、その『振り』はするものの、日本人が話し易い(理解し易い=管理し易い)英語にコミュニケーションラングエッジを統一し、地域性を殺し、意見を出難くしている。しかし、そのことに気付いていても、多様な言語に対応する手間やコストのことを考えたり、欧州でも『中央集権的な体制』を敷いていたりするために、見て見ぬふりをしている。(特に、UKに欧州の本店を置いている企業では、その傾向が顕著であると言える。)この例は、一見何も関係ないような話に思われるかも知れないが、実は、欧州における日系企業の実態を正確に描写している例と言える。『振り』はしても、『真』の実践が伴わない日系企業の実情である。特に、欧州を一つの共同体と扱い始めてからは、地域性が全く生かされないようになったとも言える。 日系企業は、今もう一度「営業力」について考え直す必要があると考える。なぜならば、将来、アジアが、市場として、欧州化する可能性があるからである。勿論、ラテン・アメリカも、程度は違っても、同様になると推測される。つまり、『多様性』に則った営業力が要求される市場になると言うことである。アジアも、一つの国ではなく、異なる言語と、異なる文化や歴史に支えられた市場だからである。そして、Globalizationの後には、また螺旋状(Spiral)に進化した現地生産体制が要求されると考えられるからである。 そんな意味で、今工場を撤退させずに、営業力を高める努力をすることが、将来を見据えて、日系企業に求められていることではないのだろうか。「安ければ売れる」のではなく、また、「製品力(品質とコスト)だけで売る」時代ではなくなると言うことで、つまり、真の営業力を、欧州で、日系企業は身につけるべきであると言うことである。簡単に言えば、売れれば、工場を撤退させる必要がないのだから、売ることに専念する。そのためには、地域性を理解し、多様性に追従する必要がある。しかし、悲しいことに、現在の日系企業の営業は、日本のやり方や英語圏(USA)での実績に縛られ過ぎて、多様性の存在する欧州では、力がない。まず、そのことを理解し、対策を打つ必要性を感じることが第一歩となる。しかし、残念ながら、現状では、そのような認識に立つ日系企業は見受けられない。手遅れにならないうちに、早く気付いてほしいものである。
2021年2月25日(木)の ESDEN ビジネス・スクールでのインタビュー(ESDEN Talks(その2)
2021年2月25日(木)スペインのビジネス・スクールESDENのインタビュー(ESDEN Talks)の内容その2 YouTube 動画のURL: https://www.youtube.com/watch?v=I2xeb08CeVs&t=22s (質問 4) 今述べられたことの結果として、文化の違いを乗り越えるために、西洋では、日本の文化、伝統、そして、歴史のどのような点を認識しなければならないのですか? (回答 4) さて、文化の違いについて話をする際、まず、言わせてもらいたいことは、この違いは、『生まれ持って』のものではなく、『教育(環境)』によるものだと言うことです。従って、文化の違いは、負かすことができないとか、超えることができないとか言うものではありません。この日本的『マネージメント(経営管理)』は、紛れもなく、スペインで実践できるものだと私は信じています。 その点を考慮して、二つの文化(スペインと日本)は、ある意味で、同じ硬貨の表と裏だと言わせてください。すなわち、見た目では、相交えない両極端に思われますが、実は一緒のベース(硬貨)だと言うことです。 例えば、スペインの鋸の刃は、押すことで木が切れるように作られていることを知っていますか?しかし、日本の鋸は、引くと木が切れます。また、例えば、スペイン語で、「Quiero comer algo dulce.」というと、日本語では、「甘いものが食べたい」となり、(スペイン語を日本語の順番で並び替えると、)「Dulce algo comer quiero.」となります。この文は、言葉が完全に正反対に並んでいますよね。 これが、日本と西洋の大きな違いです。疑うことなく、日本人と仕事をする時は、この違いを認識するべきです。つまり、日本人は、皆さんにように考えない、真逆の形で物事を考えると言うことです。従って、皆さんが最初に考えることを、私たち日本人は最後に考えると言うことを理解する必要があります。 しかも、日本人の会話は、-1+1+1= 1の方程式に則って構成されていることを理解する必要があります。つまり、日本人は、最初に結論(意思)を示しません。そして、『心配性』な文化のせいで、いつも最初の言葉は、ネガティブか、懐疑的な(-1)ものです。それに対して、スペイン人は、結論(意思)を示すことから始め、1 =+1+1-1の方程式で(会話を)構成します。 […]
2021年2月25日(木)の ESDEN ビジネス・スクールでのインタビュー(ESDEN Talks(その1)
この2021年2月25日(木)に、スペインのビジネス・スクールESDENからインタビュー(ESDEN Talks)をされた際のYouTube 動画とその内容について、ここに掲示させて頂きます。 YouTube 動画のURL: https://www.youtube.com/watch?v=I2xeb08CeVs&t=22s インタビューのテーマは、 「日本から何が学べるのか?:生産手法を超えてところにあるもの」でした。 (質問 1) 出崎さん、こんにちは。今日は参加して下さって、本当にありがとうございます。さて、まず、『令和』と言う新しい時代の到来への祝辞を唱えさせて頂き、そして、日本における新コロナのパンデミック状況への質問、更に、もしご存じなら、オリンピックについてのニュースについてお尋ねして、このインタビューを開始したいと思います。 (回答 1) こんにちは。こちらこそ、グティエレスさん、ご招待頂きありがとうございます。 はい、ご存じのように、天皇陛下が代わられたことで、『元号』が代わり、今年は、令和3年です。 私は、『昭和』生まれなので、『昭和』、『平成』、そして『令和』の3時代を生きていることになります。 『令和』の日本政府の公式な訳は、「Beautiful Harmony(美しい調和)」で、『人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ』という意味が込められています。個人的に、この元号の名称は、気に入っています。 さて、日本におけるCOVID-19パンデミックの状況についてですが、ここスペインと同じで心配な状況です。しかし、日本は、『心配性』の文化のために、幸運にもスペインやUSAのような多くの死者を出していません。(現在のところ、8000人以下です。)日本人は、もう過ぎてしまったことよりもこれから来ることに対して、とても心配をします。そのため、私たちの努力と対策は、対処と言うよりも予防に注がれます。『転ばぬ先の杖』と言うことわざが、その文化を良く物語っていると思います。 オリンピック開催についてですが、心では開催したいと思い、しかし、頭では開催できない、ないしは、開催するべきではないと、日本では多くの人が感じていると思います。IOC(国際オリンピック委員会)は、キャンセルはしないとし、どのように開催するかを考えているとしています。例えば、観客無しとか、減らしてとか、等々です。しかし、具体的な対策はまだなく、簡単ではない状況です。 (質問 2) 良くご存じと思われる日本又は日本の外に存在する日本企業について尋ねる形で、このインタビューを続けさせてください。(さて、日本企業は、)ここ直近数ヶ月、パンデミックにどのように適応していますか?その適応例を話してくださいませんか? (回答 2) マスク着用や、間仕切り、リモートワーク等、推薦される全ての対策を採ってきていますが、その意味から言うと、日本の会社だからと言って特別の対策は打ってはいません。多分、違いがあるとすれば、『どんな対策』ではなく、『どのくらい守っているのか(どのくらい効果があるのか)』の違いだと思います。 […]
(去年掲示忘れのBlog)現地人が駐在員に求める3つの姿勢 – 3.日本(親会社)に対して文句を言ってほしい。(現地を守ってほしい。)。
第三に、現地人が求めるものが、これ思いです。 この点については、説明の必要はないものかも知れません。分かっていても、この要望に応えるのは難しいと思われることでしょう。駐在員の方々は、日本の親会社から派遣されているので、日本の親会社を向くのは当然です。しかし、現地で一緒に仕事をして行く限り、現地人の代弁役になってもらいたいと言う現地人の願いはとても強いと言えます。先にも述べさせて頂いたように、現地人は、見ていないようで、良く駐在員の態度や顔色(表情)を注意して観察しています。そして、特に、駐在員の方々が、どのように日本(親会社)と関係を持たれているかを日常業務を通して注視しています。本当の関係を現地人との間で持ちたいと思われるのなら、この要望に対して姿勢で示してあげることです。例え、「文句」が通らなかったとしても、現地人が見ているのは姿勢です。従って、結果よりも、その姿勢を見せることが現地人を引き寄せる力になります。全員を引き寄せることはできなくとも、必ず共感を持ってくれる現地人はいるので、是非、姿勢を見せるようにしてください。現地人には絶対できないことなので、現地人は駐在員に期待をしています。 今まで数週間に渡って述べて来た「現地人が駐在員に求める3つの態度」の他に、駐在員が心掛けなければいけないことは、短い駐在期間でやり遂げられることは(失礼な言い方ですが、)「高が知れている」と言うことを、まず自覚することです。だからと言って、「何もしない」、「することを諦める」と言うことではありません。短い期間に成果を出すことを目指すのではなく、次の駐在員の方につなげる仕事を心掛けることをお勧めします。 具体的には、「やり方」を教えるのではなく、判断基準を教えるように努めると言うことです。各企業に企業文化があり、その企業文化が物事を決定する時の判断基準になるはずです。ですから、スペインの子会社の現地人にその企業文化、すなわち、判断基準を示し、教えて下さい。残念ながら、多くの日本人駐在員は、(忙しいこともあり、)日常業務の中で、「この帳票通りに埋めなさい」と指示するだけに止まって仕事をしてます。それは、「やり方(帳票、形式等)」を真似させることで、現地人が仕事を「理解したように思える」し、周り(日本)からも「管理しているようにも見える」ので安心できるからだと言えます。また、「やり方」を教えることが、「マネージメント」を教えることだと勘違いしているところもあるからとも言えます。更に、悪いことに、「やり方」を真似させるだけで、それなりの成果は得ることが出来ます。そのため、結果が短期間でも出ているように見えます。しかし、日本人には「絵を見る」ように分かり易いものでも、現地人(スペイン人)には分からないと言うことが全く理解されていないので、その「やり方(帳票、形式等)」はやらせている駐在員の方がいなくなると続かなくなるか、全く違った形で無駄な事務作業として残るだけです。そんな現場をいくつも見て来ています。本来ならば、帳票や形式こそ「やり方」なので、現地の環境に合わせて変化させ、出てきたものをその後日本流に料理する方が得策なのにも関わらず、それがなされていません。その理由は、駐在員が忙しすぎるからかも知れません。しっかり説明する時間が取れないからかも知れません。しかし、それでは、物事を決定する時の判断基準となる企業文化が現地人に全く落とし込まれていないだけでなく、任期限りの結果、成果しか残っていないと言わざるを得ません。それでは、現地の子会社は決して進歩はしません。進歩させるためには、駐在員の方々の仕事のやり方の見直し、方向転換が必要ではないかと現場を見て来て思っています。
「悩み事」相談1-2 スペイン人をしっかり理解
最後に、「スペイン人は、真似するのが下手」と言う指摘をさせて下さい。 もっとストレートに表現すれば、「下手」と言うより、スペイン人は、真似をしたがりません。これは、スペイン人にとって、大きなハンディーキャップです。スペイン人は、上司(日本人駐在員)の前で、自分の価値を見せようとする癖を持っています(傾向があります)。「自分の価値」は、「自分の主張」を認めてもらうことだと理解しているので、日本人駐在員が何かを教えようとすると、自分の考えを主張しようとします。特に、帳票の様な形あるものを教えようとすると、その帳票をしっかりと理解する努力よりも、帳票と『競争』しようとします。ですから、駐在員の方が持ち出した帳票よりも、自分がやっているやり方の方がより良いと主張しようとします。言い換えれば、「真似することをしたがらない」と言うことです。そして、スペイン人は頑固で、自分のやっていることをベストと考えているので、そう簡単には引き下がりません。(勿論、力関係では、簡単に引き下がります。「放棄」します。)それは、スペイン人にとっては、「自分の価値」を上司に認めてもらう機会でもあるからです。実は、この瞬間が、「スペイン人に仕事のやり方を教える」際のとても大事な瞬間で、教え切ると教えられたやり方は、その駐在員の人が居なくなっても、スペイン人の身に付いた仕事のやり方として継続されることになります。 ここで何が言いたいかと言えば、真似をしたがらないスペイン人に『真似をする』ように頼むことが、キーとなると言うことです。何だと思われるかも知れませんが、例えば、「帳票を埋めなさい」と指示するのと、「帳票を真似なさい」と指示するのでは、大きな違いがあります。と言うのは、「帳票を埋めなさい」と言う指示をもらったスペイン人は、自分の解釈で、帳票を埋めますが、「帳票を真似なさい」と指示されると、その帳票と自分のやっていることを比較し、分からない部分はしっかりと聞いて来ます。また、更に良いことは、真似をしてもらう帳票と自分のやっていることを比較して、自分が良いと思う案をスペイン人が主張してくれるので、どの点でスペイン人が自分のやり方の方が良いと考えているのかがはっきり分かります。この時の主張の仕方は、帳票と『競争』しようとして、「駐在員の方が持ち出した帳票よりも自分がやっているやり方の方がより良い」と主張するのではなく、帳票を『使おう』として湧いた疑問からの主張のため、質が違うと言えます。と言うのは、具体性を持った『真似をする』ための議論となり、議論はし易くなります。つまり、現状に基づいたスペイン人の考えが聞ける機会にもなります。勿論、スペイン人とのコミュニケーションの改善にもなります。 ですから、「これをしなさい」、「こうしない」と言う言い方ではなく、「こんな風にできないか」とか、「これを真似て作ってくれないか」と、『真似をする』ように頼むことが、秘訣です。スペイン人と仕事をする心掛けをしてください。決して、スペイン人に仕事をさせるではありません。この違いが判らない、はき違えている駐在員を多く見てきています。 スペイン人は、「頼めば、色々とやってくれますが、指示すれば、指示されたことしかしない」と以前話をさせて頂いたと思います。仕事は、『人』と『人間関係』を成立させて、初めてやり遂げられるものなので、スペインで仕事をする場合は、スペイン人をしっかり理解することが、まず一番の秘訣だと、私は確信しています。 スペイン人は、「頼り」になります。皆さんの接し方次第です。
「悩み事」相談1-1『仕事をする人』と『仕事を与える人』との区別
今日は、ある人から次のような悩み事を聞き、私の考えを話させてもらった例を紹介させて頂きます。同じような悩み事を持つ方の参考になればと思う次第です。 悩み事: 「危機、リスク管理の意識が強すぎるために、最終的に顧客と料金や条件を決める際に、若干のリスクを背負うことも毛嫌い傾向にあり、最終的な受注に結び付かないことがあります。現在は、私がいるので最終的な責任を取ることで前に進めていますが、将来、私が帰任した場合に、上記の管理者としてではなく責任者としてポジティブに支店運営を進めさせるには、どのようにしたら上手く行くのか悩んでいます。」 私の考察: この悩み事を考えるにあたって、最初に、皆さんに思い出してもらいたいのは、このBlogで最初に紹介させて頂いた『海外進出している日系企業の発想の転換を促すレポート」の中に書かせてもらった「スペイン人は、『自分の意見が最高のもの』と思って、誇りを持って自分の仕事をやっている」と言う事実です。そして、その仕事のやり方は、とても保守的で、変化(改革)を望みません。いや、「望まない」と言うよりは、「考え付かない」と言うべきかも知れません。なぜなら、欧州での仕事のやり方は、与えられたやり方をしっかりやりこなすことが、『仕事をする人』の任務で、やり方を変える(改善する)のは、『仕事を与える人』の責務と考えられているからです。つまり、「上部より(この様に)変えろ」と命令されるまで、与えられたものを自らが信じるベストの方法で遂行することが、『仕事をする人』の任務と理解されているからです。余談になるかも知れませんが、だからこそ、『仕事を与えられた人がその与えられた仕事のやり方を考えて変える』と言う日本発の「Kaizen改善(mejora continua)」活動の発想が、日本式マネージメントとして、欧州人の目に、新鮮で、目新しく映っているのだと考えます。 この点をもう少し掘り下げると、日本では、『仕事を与える人』と言う認識は存在せず、上部は、指針、方向性は示すものの、具体的な展開は各部署、仕事をする人が決めるものとしていると言えるのではないでしょうか。つまり、『仕事をする人』自身が、何をするべきかを考え、仕事を遂行していくことが、日本では当たり前として、要求されます。上部は、仕事の方向性を確認、チェックし、結果への責任を負う(責務)と言う役割を持つものの、決して、仕事のやり方を具体的に示す義務は持っていません。その代り、仕事に従事している人たちが仕事のやり方を考えられるように導く(指導する)義務を負います。確かに、昔は、上司が、「これをやれ、あれをやれ」と具体的に指示をしていましたが、そんな昔でさえ、「提案制度」や「改善活動」等が制度化され、常に、仕事をする人からの仕事のやり方への意見が求めて来ました。これは、もしかすると、日本の会社では、上に行けば行くほど、頻繁に異動するため、部下に頼らなければ、任された部署のマネージメントがしっかりできないことを身をもって知っているからかも知れません。つまり、頻繁な異動で、会社についての幅広い知識と認識は持つようになるものの、任された部署での経験や専門的知識に欠ける、ないしは、不足しているために、細部までの指示が出来ず、部下の意見を聞きながら、仕事の結果を出していかなければならないからだと考えます。それに対して、異動が少なく、任されている部署の経験や専門的知識を自らが持っている上司を持つ欧州の会社では、上司が細部まで仕事を知っているために、細部までの指示ができ、『仕事をする人』と『仕事を与える人』とを区別することが出来るからだと考えます。と言うことで、日本と、欧州(スペイン)では、大きな違いがあります。 この違いについて、書き出すと、きりがないので、また別の機会にします。 私見ですが、日本式の方が、会社としての成長の余地がると理解しています。 さて、上述してきた違いをしっかり理解して、悩み事について考えると、まず、事実の認識が的を射ていないのではと思えるのです。それは、『危機、リスク管理の意識が強すぎる』と認識されているようですが、そうではなく、一つの「やり方」を踏襲してきて、「そのやり方」から抜け出すことが出来ないでいると認識するべきではないかと言うことです。つまり、「リスクを背負わない」と言う「やり方」を学んでおり、誰かが変えろと言ってくれるまでは、その「やり方」を自分の考えるベストの方法で、(真剣に、そして、精一杯に、)やり切っているように見えます。得てして、スペイン人は、一般的に、『危機、リスク管理の意識は薄く』、計画性をもってリスク回避を考えることが苦手です。しかし、逆に、危機やリスクが現実化した際の対応は、迅速で、その場を凌ぐ能力は卓越しています。今回のCovid-19でも露呈されたように、リスク管理は全然できていませんでした。(再三のリスク警鐘を無視したり、リスクを甘く見たり、していました。)しかし、感染が爆発的に広がり、その場を凌ぐ必要が出た時、逸早く「警戒態勢」を宣言し、地方自治体に移譲されている権限を中央に集中させ、地方自治体のエゴでバラバラに対応がされないように手を打ちました。確かに、医療崩壊で多数の死亡者を出しているものの、この策は、スペイン人の現実化したリスクに対する対応の速さを示していると思えます。ですから、『一般的』に解釈すれば、『若干のリスクを背負うことも毛嫌い傾向』は、教えられた「やり方」から逸脱していない証拠と解釈するべきだと考えます。 そう理解をして、「どうすれば良いか」という議論をすると、やはり、「企業文化をもう一度教える」と言うことが、基礎になります。その上で、方法論として、「若干のリスクを背負う」判断基準を示し、スペイン人が「やり方」として認識できるようにしてあげることが重要だと理解します。 スペインでは、『水が半分入ったコップ』の話を使って、「ポジティブ」になることを教えています。ご存知ですか?その話とは、『水が半分入ったコップ』見せて、あなたは、半分『しか』ないと思いますか?それとも、半分『も』あると思いますか?と問い掛けるものです。もう分ってもらえると思いますが、同じ事実にもかかわらず、全く正反対の考え方が成り立ちます。つまり、『考え方』次第で、物事の受け取り方が変わると言うことが教えられてます。「分かち合えば、余る」、「取り合えば、足りない」と言う教えにも繋がりますね。「Be positive」 を教えています。多分、現地人スタッフにも使える話だと思います。『リスクを背負う』と見るのか、「商機がある」と取るのか、判断基準を教えてあげることで、この「やり方」をスペイン人に身に付けてもらっては、どうでしょうか?
スペイン人に仕事のやり方を教え、根付かせるために -2.『真似』をさせる
「1.今起こっていることを理解」の中で述べたように、スペイン人が、「自分の価値」を上司に認めてもらう機会と捉えるその瞬間を利用し、スペイン人に仕事のやり方を真似してもらい、そのやり方を身に付けてもらうことが出来ます。その瞬間が、もっとも効果的です。そして、その仕事のやり方を教えた駐在員が居なくなっても、その仕事のやり方が継続されることになります。 まずは、しっかりと帳票や形式について説明することです。「企業文化」を教えることも含めて、決してこの説明を怠ってはいけません。時間が掛かっても、まず、『なぜその帳票や形式が使われる必要があるのか』と言う目的をしっかり説明する必要があります。例えば、日本人は「管理帳票」を良く作成します。その「管理帳票」には、心配性で細かい点に気の付く日本人だから配慮する項目が網羅されています。これまた、このブログを始めた最初の『海外進出している日系企業の発想の転換を促すレポート」に詳しく説明していますが、スペイン人は、日本人が当たり前に気付く点ですら気付けません。この事実をしっかり認識し、一つ一つの項目をしっかり説明する必要があります。良く駐在員の方々が、「現地人は気が利かん」と嘆かれ、批判されるのですが、「気が利かない」のではなく、「気が付くように教育も受けてない上に、気が付かないと生きて行けない環境にもいない」ので、「気付かせてあげる」指導をしなければ、そんな嘆きや批判をするのは、「お門違い」です。ですから、しっかりと駐在員の人が当たり前と思うことも教える姿勢、根気良さを持たなければ、スペイン人に『真似をさせる』ことは到底できません。つまり、帳票や形式で、何をしようとしているのかの目的から始め、一つ一つの項目を細かく説明し、議論をし合いながら、その帳票や形式が、今スペイン人のやっているやり方よりも『優れている』ことを分からせる必要があります。そうしない限り、『真似』をしてもらえません。 しかし、この方法は、とても時間が掛かるだけでなく、とてつもない労力がスペイン人と駐在員の両者に要求されます。管理帳票がたくさん存在し、日常業務を回さなければならない中、そんなに時間も労力も掛けれないと言うのが現状ではないでしょうか。つまり、上述の方法は、理想的ですが、現実的には難しい方法です。他に方法はないのでしょうか? あります。もし駐在員の方が仕事を熟知されている方ならば、スペイン人の現状使っているもの、持っているものを見せてもらい、日本の帳票や形式のどの部分が当て嵌るか、そして、どの部分が足らないのかを調べ上げる手法です。この手法は効果的ですが、駐在員の方の能力次第です。基本的な考え方は、スペイン人の良さを尊重し、スペイン人の現状を正しく公平に理解し、足りないところを指摘し、補って、教えてあげると言うものです。こうすれば、スペイン人は帳票や形式を実務に置き換えて学ぶことが出来るので、『真似をする』ことも、足りないものを足す(学ぶ)と言う感覚で受け止めてやってくれるようになります。なぜなら、日本の帳票の『優れている点』を教えてもらうからです。但し、その補う点(足す点)が無駄と理解されないことを前提としています。 しかし、このやり方も、結構労力を使います。特に、言葉も慣れていない駐在員が赴任早々にできるものではなりません。そうなると、やはり次の方法が一番手っ取り早いことになります。 その方法とは、単純に、スペイン人に『真似をする』ように頼むことです。何だと思われるかも知れませんが、例えば、「帳票を埋めなさい」と指示するのと、「帳票を真似なさい」と指示するのでは、大きな違いがあります。と言うのは、「帳票を埋めなさい」と言う指示をもらったスペイン人は、自分の解釈で、帳票を埋めますが、「帳票を真似なさい」と指示されると、その帳票と自分のやっていることを比較し、分からない部分はしっかりと聞いて来ます。また、更に良いことは、真似をしてもらう帳票と自分のやっていることを比較して、自分が良いと思う案をスペイン人が主張してくれるので、どの点でスペイン人が自分のやり方の方が良いと考えているのかがはっきり分かります。この時の主張の仕方は、帳票と『競争』しようとしして、駐在の方が持ち出した帳票よりも、自分がやっているやり方の方がより良いと主張するのではなく、帳票を『使おう』として湧いた疑問からの主張のため、質が違うと言えます。と言うのは、具体性を持った『真似をする』ための議論となり、議論はし易くなっているからです。そして、現状に基づいたスペイン人の考えが聞ける機会にもなります。勿論、スペイン人とのコミュニケーションの改善にもなります。 ですから、『真似をする』ように頼むことが、秘訣です。 スペイン人は、「頼めば、色々とやってくれますが、指示すれば、指示されたことしかしない」と以前話をさせて頂いたと思います。仕事は、『人』と『人間関係』を成立させて、初めてやり遂げられるものなので、スペインで仕事をする場合は、スペイン人をしっかり理解することが、まず一番の秘訣です。次回は、日本人とスペイン人の違いについて書くことにします。
スペイン人に仕事のやり方を教え、根付かせるために -1.今起こっていることを理解
度々、駐在員の人が、「昔の駐在員から習っているはずなのに(今までに来た駐在員は何を教えたのだろう?)」、「なぜ、昔やってたのに、今はやってないだろう(なぜやり方が定着、継続していないのか?)」、と首を傾げる姿を見てきました。と言うのも、同じやり方(帳票や形式)で仕事がされていると思って赴任してきたところ、スペイン人が違うやり方をしていたり、やり方(帳票や形式)を教えようとしてら、「昔はそうやっていた」と言われることがあるからです。 それらの疑問への回答は、簡単に言えば、「スペイン人は、真似するのが下手」だからとなります。もっとストレートに表現すれば、「下手」と言うより、「スペイン人は、真似をしたがらない」からです。このブログを書き始めた最初の『海外進出している日系企業の発想の転換を促すレポート」をもう一度読み返いしてもらえば、理解してもらえると思いますが、スペイン人は、『自分の意見が最高のもの』と思って、自分の仕事に誇りをもってやっています。そして、自分の仕事のやり方については、とても保守的で、変化(改革)を望みません。「望まない」と言うよりは、「考え付かない」のです。と言うのは、欧州での仕事のやり方は、与えられたやり方をしっかりやりこなすことが、仕事をする人の任務で、やり方を変える(改善する)のは、仕事を与える人の責務と考えられているからです。余談になるかも知れませんが、だからこそ、仕事を与えられた人がその与えられた仕事のやり方すら考えて変える、と言う日本発の「自分の携わる仕事に対する自らの改善活動」と言う考え方を、「Kaizen(mejora continua)」と言う言葉と概念で、スペイン(欧州)の企業が導入しようとした(している)と言えます。 従って、仕事をしているスペイン人は、『与えられたやり方をしっかりやりこなしている』ことを見せようとします。そして、『しっかりやりこなしている』のに、なぜ変える必要があるのかと考えます。つまり、スペイン人は、仕事に関しては、どちらかと言うと『任務遂行継続型』で、与えられた任務をやり遂げ継続させることが使命、最高のパフォーマンスと、組織の全てのレベルで考えています。ですから、「上の人からこのように変えろ」と命令されるまで、与えられたものを自らが信じるベストの方法で遂行することが任務と心得ています。従って、他人のやり方を『真似をする』と言う発想は持ち合わせておらず、自分から『真似をしよう』とすることは全くありません。つまり、「真似る」と言うことは、「真似をしなさい」と命令されるまでは、「上の人から与えられた変化でも、自らが信じるベストでもはないからです。ですから、自分から他人を『真似』ようとはしません。 更にまた、スペイン人は、上司(日本人駐在員)の前で、自分の価値を見せようとする癖を強く持っています(傾向があります)。「自分の価値」は、「自分の主張」を認めてもらうことだと理解しているからです。従って、日本人駐在員が帳票を見せて教えよう(やらせよう)とすると、自分の考えを主張しようとします。つまり、帳票をしっかりと理解する努力よりも、帳票と『競争』しようとします。ですから、駐在の方が持ち出した帳票よりも、自分がやっているやり方の方がより良いと主張しようとします。言い換えれば、「真似することをしたがらない」と言うことです。結構、スペイン人は頑固で、自分のやっていることをベストと考えているので、簡単には引き下がりません。それは、スペイン人にとっては、「自分の価値」を上司に認めてもらう機会でもあるからです。実は、この瞬間が、「スペイン人に仕事のやり方を教える」際のとても大事な瞬間で、教え切ると教えられたやり方は、その駐在員の人が居なくなっても、スペイン人の身に付いた仕事のやり方として継続されることになります。 しかし、残念なことに、通常、駐在員の方々にとって教えようとしている帳票は『当たり前』のものなので、その当たり前が分からないスペイン人を論破するほどの説得力のある、「なぜその帳票がより良いのか」の理由を、スペイン語ないしは英語で上手く説明することができません。そのため、最後は、力関係で、駐在員がスペイン人にやらせることになります。その場合、帳票を埋めるようにとしか説明できないので、スペイン人の理解に委ねた帳票の使い方に止まってしまいます。得てして、「自分の価値を」示そうと一生懸命に話をしていればしているほど、そして納得することなく『命令』と捉えれば捉えるほど、スペイン人の耳には駐在員の帳票や形式への説明が入っていないので、『やらされている感』だけで帳票や形式に従うことになります。 更に、問題は、これまた、このブログを始めた最初の『海外進出している日系企業の発想の転換を促すレポート」に詳しく説明していますが、スペイン人は、日本人が日本語使って日本で暮らすために『不可欠な』技術(能力)として身に付けざるを得ない、『違い』を認識する洞察力を持ち備えていません。従って、帳票を見て、マスの長さや形、漢字の能力を十二分に発揮した短い言葉で書かれた表題等のニュアンスを読み取ることは到底できません。従って、駐在員の教えたはずの帳票は、日本で使用されているもの、または、使用され方と、一概に、同一だとは言えないものになってしまう可能性が高いのです。ですから、次に来た駐在員の方が、「昔の駐在員から習っているはずなのに(今までに来た駐在員は何を教えたのだろう?)」と、実際に使われている帳票、使われ方を見て驚かれるのです。 更に、その帳票や形式を、力関係でやらせた駐在員が帰任すると、ほんの些細な躓きや問題(忙しいとか)が発生すると、その帳票は躊躇なく放棄され、埋もれてしまうため、次に来た駐在員の方が、その埋もれた帳票を発見し、「なぜ、昔やってたのに、今はやってないだろう(なぜやり方が定着、継続していないのか?)」と思われることになるのです。 それでは、どのようにすれば、スペイン人に仕事のやり方(帳票や形式)を真似してもらい、そのやり方を身に付けてもらい、継続してもらうようになるのでしょうか?それは、可能なのでしょうか? 「はい、可能です。」
日本人が犯す小さく、そして、大きなミス(コミュニケーション向上のために) その2
(前回からの続き) 『言葉探し(選び)』を止めることで、言語学習能力が上達し、(日本語以外の)他の言語で人とコミュニケーションが取れるようになります。これは、私の経験です。大学を卒業し、就職をした後、ボランティア活動に従事するため、アイルランドのダブリンで、少しの期間、Language Academyに通って英語を研修したことがあります。大学も一応卒業していたので、英語、特に、文法の知識も十分に持っていました。また、社会人を経験していたので、時事や常識も兼ね備えていました。しかし、英語、特に、英語を話すことが、なかなか上達しませんでした。そんなある時アイルランド人の友達から、「出崎、お前はなぜ話をしないんだ(会話に入ってこないんだ)。俺たちは、お前と話がしたい。お前の意見が聞きたいだけで、(英語を母国語として話す俺たちは、)お前に完璧な英語なんか期待してはいない。しかも、間違いがあれば、直してあげれるので、お前の英語の上達にもつながるはずだ。でも、お前が話に加わらないから、それもできない。なぜ話をしないんだ。」と面と向かって言われたことがあります。その時の真実は、「話をしない」のではなく、「話が出来ない」でした。そして、その時初めて、自分の『間違い(ミス)』に気付かさせられました。それまで、自分がやっていたことが全く分かっていませんでした。しかし、彼の言葉で、「目から鱗が落ちた」ように、自分の犯していた『間違い(ミス)』に気づかされました。その『間違い(ミス)』とは、今まで書いてきた『日本人の習性(癖)』から抜け出すことが出来ていなかったと言う事実でした。つまり、そんなにボキャブラリーがあったわけでもないのに、言いたい言葉を探すことに時間を費やして、会話のタイミングを逸して(ミスって)いました。社会人生活を経験し、時事や常識を持っていたので、話されるテーマに対してきっちりした自分の意見があり、その意見を言いたくて、『言葉選び』に力を注いでいました。しかし、ボキャブラリーの少ない当時の私には、日本語で表現したいニュアンスを持つ英語の言葉を見つけ出すことは、至難の業で、見つからないか、見つかった時には、もう会話が先に進んでしまっていました。それで、機会を逸し、話の中に入れなかったと言うのが真実でした。会話は、ある意味では、リズムです。タイミング良く『切り返し』ができるリズムこそ、会話では要求されます。しかし、そのリズムよりも、言葉を選ぶことに専念していました。それが、私の犯していた『間違い(ミス)』でした。なぜなら、日本語の使い方をそのまま英語に当てはめて、言いたいことをしっかり伝えたいからと、必死に言いたい日本語に会う英語の単語を探していたのです。その当時の私のボキャブラリー能力では、決して自分の言いたいことを表現できる言葉選びなど出来るわけはなかったのですが、『無意識』のうちに、必死で言葉を選び、大切なタイミングを逃して、会話が出来なくなっていました。ですから、会話の機会を失っていた私は、発音が良くなることも、また、言い回し(慣用句)を学ぶこともなかったのは、当然の結果でした。この『間違い(ミス)』に気付き、『言葉選び』を止め、とにかく、話すこと、口からどんな言葉でも良いので発することで、会話に加わることをしました。そして、英語が上達しました。 勿論、英語の上達を遅れさせていた私の犯していた『間違い(ミス)』は、『言葉選び』の習性(癖)だけではなく、『間違い』を極端に恐れる日本人社会に育ったため、『間違いへの心配、恥』から話が出来なかったと言うことも事実です。(正しい英語の文章を頭の中で組み立て終わるまで、言葉を発していなかったので、会話のリズムについて行けなかった。)この『間違い』を極端に恐れる日本人社会が日本人に植え付けている『間違いへの心配、恥』が、どのようにスペインや他の欧州の国々での駐在において弊害となっているかについては、他の機会に詳しくお話しさせて頂きたいと思います。 とにかく、今回のメッセージは、「スペイン語や英語を日本語のように使っていませんか?」と言う駐在員の方々への問い掛けです。そして、「スペイン語や英語なのに、日本語のように言葉選びをしていたら、あなたが考えるほど、あなたの言いたいことは現地人に伝わっていません」とアドバイスさせて頂き、「言葉選びを止めることで、もっとスペイン人と日本人が理解し、一緒に仕事ができる」と提案させて頂きます。一緒に仕事をするためには、コミュニケーションが一番大事です。ですから、コミュニケーションを妨げる全ての要素を、正しく認識し、排除することが、駐在員として現地で仕事ができるようになる秘訣だと考えます。