海外進出している日系企業の発想の転換を促すレポート

海外進出している日系企業の「致命的なミス」の認識:

日本の企業も『生き残り』と『成長』を掛けて海外に進出して来ていますが、海外進出において大きな『ミス』を犯し続けています。その『ミス』とは、日本の会社はそれぞれ独自の企業文化を作り上げ成長してきたにも関わらず、その独自の企業文化を、海外、特に、欧州(例えば、スペイン)の関連子会社には伝え切っていないということです。時としては、「伝え切る」どころか、「伝えよう」ともしていません。これは、日系企業の「致命的なミス」です。

欧州(例えば、スペイン)に進出している日系企業の会社を多く見て来ていますが、確かに、掲示物の多さ等、工場運営では、日系色が出ているように見えます。しかし、実際に踏み込んで実態を見てみると、帳票や形式だけが真似されているだけです。また、営業活動でも、工場運営と同じように帳票や形式を真似させるだけで、なぜそのような帳票を使うようになったのか、そのような形式を取るようになったのか等の「企業文化」に関係する部分はほとんど説明されずに、会社運営がされているのが現状です。悪いことに、帳票や形式だけを真似させることで、それなりの良い結果は出せるため、日常時業務は回っているように見えます。しかも帳票や形式を真似しているので、日本側にも迷惑が掛からず、日本人駐在員にとっては好都合です。そして、いつの間にか帳票や形式(やり方)だけを真似させることが、「マネージメント」を教えることだと勘違いして、「マネージメント」イコール「標準化」の方程式を引いてしまっている日系企業も多く存在しています。

しかし、日系企業を海外進出するまでに成長させたのは、帳票や形式(やり方)ではありません。帳票や形式を生み出した「企業文化」が存在したからこそです。従って、帳票や形式(やり方)を伝えるのではなく、「企業文化」を伝えることが、欧州(スペイン)に進出している日系企業には、求められているのです。せっかく海外に進出して子会社を設立したとしても、「企業文化」が伝わらない、伝えられないと言うことは、同じ「土台」を共有しない会社になってしまうため、『関連子会社』ではなく、『協力会社』に過ぎなくなってしまいます。しかし、多くの日系企業は、そのことに気が付いていません。それは、「企業文化」を伝達しなくても、目先の結果がある程度良いものだからです。

勿論、例外はあります。H社は、H社独自のフィロソフィー(企業文化)を根付かせようと努力をしています。しかし、残念なことに、第二章で説明する日本人の「考え」の組み立て方と欧州人(スペイン人)の「考え」の組み立て方の違いをしっかり理解把握していないので、「企業文化」がなかなか根付いていません。なぜならば、全世界にある拠点間の共通語を『英語』にして、同じ言語を使うことで、理解し合えると簡単に考え、『英語』に頼った「企業文化」の伝達に力を注いでいるからです。

しかし、後で詳しく言及しますが、本当に「理解し合う」ためには、共通語を持つことよりも、各々の言語を駆使して『考え』が説明され、日本人の「考え」の組み立て方と欧州人(スペイン人)の「考え」の組み立て方の違いをしっかりと認識しながら、その『考え』を相手の言語で正確に伝えることが必要です。つまり、共通言語と言う「やり方」が重要ではなく、『考え』の組み立て方と言う「文化」の違いを心得て話し合うことです。そうすることで、正確に『考え』がお互いに伝わるのです。しかし、残念なことに、この重要な点が理解されずに、欧州(スペイン)に存在する日系企業の子会社は、経営、運営されているのです。また、全世界にある拠点間の共通語を『日本語』ではなく、『英語』と言う言語にしているため、更に「企業文化」を伝えることが難しくなっていると言うことにも気が付いていません。その理由については、また別の場で話をしたいと考えます。

さて、確かに、企業なので、『結果』が全てなのですが、本当にそれで良いのでしょうか?『結果』が出るのなら、「企業文化」を捨てても良いのでしょうか?会社を成長させてきた「企業文化」を捨てて、その場の結果を求めることが、海外進出している日系企業の長期的な戦略として、的を得ているのでしょうか?

「それで良し」と考える人たちも多いと思います。その人たちは、「環境に合ったやり方が一番で、日本式を押し付ける必要はない」と理由付けし、「結果が出ているのだから、現地人が『自立化』してやっているのだから、それが『現地化』なんだ」と結論付け、主張します。しかし、本当にそうなのでしょうか。

確かに、「やり方」は、環境に合わせて変化させるべきもので、環境に適合させることで効率化が図れるものです。従って、「日本式を押し付ける必要はない」と言うのは、その通りです。しかし、現実に行われているのは、帳票や形式だけを真似させている状況であり、言っている言葉とは裏腹に、残念なことに、実は「やり方」の強要をしているだけです。そして、なぜ帳票や形式を真似させているのかを考えると、日本人駐在員にとって、形に嵌めた方が「理解したように思える」からです。また、「管理しているようにも見える」からです。別の機会に説明することにしますが(*1)、「なぜ」その帳票や形式を使うのかを理解していない人によって埋められた帳票の数値や形式から導き出された考えほど、帳票や形式を理解している人の誤解を誘発するものはありません。現に、現場は、そのために発生している誤解だらけです。そして、そのことに気が付いていないのが、欧州(スペイン)に進出している日系企業の実情です。日本人が、「理解したように思える」、「管理しているようにも見える」から、日本の「帳票」を使わせる習慣こそ、欧州(スペイン)に進出している日系企業がやめなければならないことなのです。そして、「やり方」ではなく、「企業文化」にあたる帳票の「なぜ」の部分を伝えなければ、欧州(スペイン)に所在する日系企業の会社は、『協力会社』にはなれても、『関連子会社』になれないことをしっかりと認識する必要があります。つまり、欧州(スペイン)で、多くの日系企業の犯している「致命的なミス」は、「やり方」を押し付けるだけで、「企業文化」を伝えきっていないと言う点です。

(*1)日本的な考えの組み立て方(思考回路)と欧州(スペイン)的な考えの組み立て方(思考回路)の違い。

「企業文化」は、「やり方」ではありません。また、「日本式」と決め付けられるものではなく、各社特有のものです。そして、「企業文化」の本当の役割は、経営判断を下して行く際の「指針」なるとものです。

例えば、「人間尊重」と言う企業文化を持つ会社があるとします。その会社は、日本では役職に関係なく、全従業員が「さん」付けで呼び合っているとします。この場合、「さん」付けで呼ぶと言うのが「やり方」で、「企業文化」は人間尊重です。従って、欧州(スペイン)に存在する子会社に伝えなければならないものは、「人間尊重」の企業文化で、「さん」付けで全従業員が呼び合うことではありません。勿論、「さん」付けで呼び合うことは、「人間尊重」の企業文化を育ませる「飼料」になると言えます。しかし、「さん」付けで呼び合ったからと言って、「人間尊重」の企業文化が根付いているとは、必ずしも言えません。「さん」付けで呼び合っても、「人間尊重」の企業文化が根付いていないと、「パワハラ」が発生するのは明白な事実だからです。

従って、この例で言うと、企業文化である「人間尊重」は、「パワハラ」をさせない「指針」であり、経営判断に繋がるものです。従って、「さん」付けで呼び合わなくとも(「やり方」は変化しても)、「人間尊重」(「企業文化」)だけは伝えられなければならないものです。それは、「日本式」と言う意味ではなく、会社の特有の企業文化だからです。なぜなら、上述したように、同じ企業文化を共有しない会社は、『関連子会社』ではなく、『協力会社』に過ぎないからです。残念なことに、欧州(スペイン)に存在する日系企業の多くの子会社は、「企業文化」を伝えず、「やり方」だけを伝える「致命的なミス」が犯されているため、『協力会社』化してしまっています。

「企業文化」が伝え切れない理由:

それでは、特に、欧州(スペイン)に存在する日系企業の子会社において、なぜ「企業文化」が伝え切れないのでしょうか。

それは、日本人の「心配性」と言う「習性」から来ています。口では、『現地の自立化』、『現地化』と謳いながら、「やり方(帳票、形式等)」だけを真似させているのが現状ですが、それは、そうすることで、「理解したように思える」、「管理しているようにも見える」ので安心できる(心配が要らない)からです。そのため、ついつい「やり方」だけを教え、強要してしまっているからです。日本人は、「心配事をなくす気遣い」を社会生活で学んできいて身に付けています。そして、もっとも早い「心配事」をなくす方法は、皆「やり方」を一緒にすることだと言うことを知っています。昔、漫才のフレーズとして一世を風靡した「赤信号、皆で渡れば怖くない」と言うフレーズがありました。「皆で渡る」ことこそ、「やり方」を統一することです。そして、「事故に遭う」と言う「心配事」を、「やり方」を一致させることで消しているのでが、「事故に遭う」可能性が減ったわけでも、「皆で渡る」ことで事故の可能性を減らしているわけでもありません。消されているのは、「事故に遭う怖さ、遭った時の怖さ」です。ですから、「怖くない」こそ、日本人が求めるものです。集団心理を射抜いているだけでなく、まさに「心配」気質の日本人を的確に描写したフレーズと言えます。

また、欧州(スペイン)に進出している日系企業の中には、前述したように、「やり方を教えることがマネージメントを教えることだ」、と勘違いして実践している会社が多く見受けられます。前述の漫才のフレーズを使えば、そんな日系企業の会社は、「いつ」渡るとか、「何人」なら皆となるとか、細かく「やり方」を決める(標準化する)ことだけに力を注いでいます。そして、それで「マネージメント」力が上がると考えています。確かに、「やり方の標準化」で、型に嵌め込み「はみ出させない」ようにするので、あたかも間違いやミスが防げているように思えます。しかし、日本人の経験や(心配性の習性から体得している)感性に基づいて出来上がった「やり方」なので、日本人の経験した間違いやミスは防げても、欧州人(スペイン人)が普段犯し易い間違いやミスを防げているとは言えません。例えば、前述の漫才のフレーズを使うと、「車がいない時」を「いつ」とし、「10人以上が一緒に」を「何人」として、「怖くなく」渡れる「やり方」を標準化します。日本人の場合は、車がいない時とは、車が『全く見えていない時』と理解し、しかも10人以上が『一緒』渡ることが、「怖くなく」渡れる判断条件と理解します。しかし、欧州人(スペイン人)の場合は、「車がいない時」は、車が『目の前』にいない時(渡っても事故にならないと考える距離に車がいても構わない)と解釈しがちなのです。そして、「10人以上が一緒に」と言う条件も、10人で一緒に渡ろうとして、渡る間際に1人が渡ることを断念した場合、9人で渡っても問題ないのかの判断で、日本人は『ダメ』と判断し、残りの9人も渡るのを止めるべきと判断します。しかし、欧州人(スペイン人)の場合、9人でも「怖くない」のなら『渡れば良い』と判断します。なぜなら、10人で一緒に渡ろうとして、例え1人が渡らなくとも、車が『目の前』にいないので、怖くなければ、渡るべきと考えるからです。この違いこそ、後ほど説明されてもらう「日本人とスペイン人の『考え』の組み立て方の違い」なのです。ですから、いくら「やり方」を標準化し教えても、このように『理解の違い』が発生し、マネージメント力の向上が図られていると言えません。従って、「企業文化」の伝承にもつながっていないのです。「日本人とスペイン人の『考え』の組み立て方の違い」を理解して対応しない限り、「やり方」を教えても、マネージメント力は上がらず、企業文化もちっとも伝わらないのです。しかし、欧州(スペイン)に進出している日系企業はこのことに気づいていません。それは、日本の親会社が気付いていないからです。逆に、これでもか、これでもか、と「やり方」の標準化(帳票や形式の押し付け)を欧州(スペイン)の子会社に要求し、その結果、管理業務だけが増える効率の悪い会社になっているのです。一口に言うと、「無駄な所に力を入れ、力を入れなければならない所に力を入れていない」と言うのが欧州(スペイン)に進出している日系企業の現状です。

本来、『現地の自立化』、『現地化』は、「やり方」は任せるが、「企業文化」を踏襲し、日本の親会社とベクトルのあった経営判断ができるレベルに達することです。例えば、上述の漫才のフレーズに沿うと、「赤信号で、決められた条件下(標準に従って)に皆で一緒に渡る」ようにできるようになるのが、『現地の自立化』、『現地化』ではないはずです。「企業文化」、例えば、それが『安全第一』とすれば、「何時、何人なら赤信号でも渡る」と標準化し行動するのではなく、日本の親会社に言われること無く、赤信号では渡らないと言う「判断」を出来るようになることが、真の『現地の自立化』、『現地化』ではないでしょうか。

残念なことに、実は、全く逆の現象が現場では起こっています。多くの日本人駐在員は、日常業務の中で、「この帳票通りに埋めなさい」と平気に指示を出しています。それは、今まで述べてきたように、「やり方(帳票、形式等)」を真似させることで、「理解したように思える」、「管理しているようにも見える」ので安心できるからであり、また、「やり方」を教えることが、「マネージメント」を教えることだと勘違いしているからです。そして、更に悪いことに、その帳票を埋めるにあたって、ちゃんとした説明を現地人(スペイン人)にしていないのが、大体のケースです。なぜなら、まず、日本で働いている時に、あまりにも当たり前に帳票を埋めさせられてきたので、「なぜ」とか、「どうして」が説明ができないのです。しかもその帳票や形式は、この後説明する日本人の「考え」の組み立て方に沿って出来上がったものなので、日本人には「絵を見る」ように分かり易いのですが、それが現地人(スペイン人)には分からないと言うことが全く理解されていないのです。だから、日本人駐在員の指示は、単に「帳票を埋めなさい、作りなさい」で終わってしまうのです。本来ならば、帳票や形式こそ「やり方」なので、現地の環境に合わせて変化させ、出てきたものをその後日本流に料理する方が得策なのにも関わらず、それができないのが今の欧州(スペイン)に存在する日系企業なのです。

なぜできないのかと言うと、この後にも述べますが、日系企業は、同じ言語(帳票)を使うことで、理解し合えると簡単に思っているからです。その証拠は、全世界にある拠点間の共通語を『英語』にしている企業がたくさん存在していると言う事実です。本当に「理解し合う」ためには、共通語を持つことよりも、各々の言語を駆使して『考え』が説明され、日本人の「考え」の組み立て方と欧州人(スペイン人)の「考え」の組み立て方の違いをしっかりと認識しながら、その『考え』を相手の言語で正確に伝えることが必要です。つまり、共通言語と言う「やり方」が問題ではなく、『考え』の組み立て方と言う「文化」の違いを心得て話し合うことで、正確に『考え』がお互いに伝わるのです。しかし、残念なことに、この重要な点が理解されずに、欧州(スペイン)に存在する日系企業の子会社は、経営、運営されているのです。

また、全世界にある拠点間の共通語を『日本語』ではなく、『英語』と言う言語にしているため、更に「企業文化」を伝えることが難しくなっていると言うことにも気が付いていません。その理由については、また別の場で話をしたいと考えます。

海外進出している日系企業の「致命的なミス」は、「企業文化」を子会社に伝え切っていないことです。そのため、子会社は、『関連子会社』ではなく、『協力会社』になっているのが現状です。まず、日本と進出している地域、例えば、欧州(スペイン)の違いをしっかりと把握して、この現状を打破するのが、今、日系企業が抱えている経営の課題と言えます。そのためには、海外進出している日系企業の発想の転換が必要です。

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