現地人が駐在員に求める3つの姿勢 – 2.何か教えてもらいた。

第二に、現地人が求めるものが、これです。

人材のイメージとして、「I型」、「T型」と言う表現の仕方があります。「I型」は、専門に精通する人を指し、縦棒(I)の長さが、その人の専門知識や経験の深さを表しています。それに対して、「T型」は、多岐の分野に渡る幅の広さを持つ人を指し、横棒(一)の長さが、その人の異なる分野に跨る知識や経験の広がりを表しています。そして、Tの真ん中の縦棒の長さは、「I型」と同じ解釈です。

もうお分かりだと思いますが、欧州、例えば、スペインは、勿論、「I型」の人ばかりです。教育や社会が、人の得意とするところ(専門)を伸ばす仕組みなので、個人に焦点が置かれた「I型」の人の社会で、会社もその例外ではありません。ですから、大学で文学部を専攻した人が、一般企業に入り、営業とか、経理とかに配属されるのは、あまりスペインでは見かけない光景です。学校でも、そして会社でも自分の専門にこだわるので、縦棒(I)を伸ばしたくて仕方ないのがスペイン人です。従って、縦棒(I)を伸ばしてくれる人に対しては、尊敬や敬意をはらい学ぼうとします。また、専門性を伸ばすやり方なので、自分の専門知識や経験を見せ、それ以上のものを見せてもらうことで、納得し学ぶと言う姿勢を取ります。逆の言い方をすれば、専門家としてのプライドが高いので、自分以上のものを見せつけられない限り、自分の考えを曲げたりはしません。自分以上のものが示されない限り、自分が『頂点』であり、専門知識と経験に支えられた自分の判断が『BEST』なのです。また、「自分以上のもの」の定義の中には、(更なる専門の知識や経験に支えられる)『能力』だけでなく、会社の場合、組織から派生する『権限』も入ります。ですから、納得はしないが、上司が言うなら、そうすると言う(日本流に言うならば)投げやりな態度、言動が出てくる所以です。ある意味では、「I型」の人の存在価値は、専門の知識や経験の深さを他人に認めさせることで決まるので、そのような態度や言動が出ると言えます。

日本の会社は、「I型」と「T型」の人をうまく使い分けていますが、特に、管理監督者を見ると「T型」が求められていると言えます。色々な解釈ができるとは思います。また、時代によって日本も変化していますが、日本の教育や社会は、人の得意とするところ(専門)を伸ばす仕組みになっていると言うよりも、人の弱いところを克服し、集団の底力を上げようとする仕組みなので、「深く」よりも「幅広く」が求めらている「T型」の社会で、会社もそうなっていると言えます。そのことを証明する良い例が、日本の会社に見られる職場ローテーションの頻繁さと多岐さです。勿論、色々なリスク管理の観点からも、この職場ローテーションは行われているといえますが、色々な職場を経験することで、会社の中で、専門性に基づく判断だけでなく、他の分野にも気を配った幅広い判断ができるようになる仕組みになっていると言えます。

問題は、「T型」の駐在員が、例えばスペインの子会社に来て、各分野の「I型」の現地人と仕事をして行かなければならない難しさです。特に、リーマン・ショック以降、世界景気、特に、欧州の景気は世界を牽引するレベルにはなく、日本から各分野に「I型」の駐在員を送ることもできなくなっています。従って、「T型」の駐在員に広範囲を見てもらうしかないと言う事情もあるのかも知れませんが、「T型」の駐在員が「I型」の現地人に、専門分野で彼らに勝る知識や経験を見せることは大変難しいと言えます。唯、「T型」の駐在員の方々のマネージメント能力は高く、更に、別のレポートで説明しているように、子どもの頃から日本語を使っている日本人は、違いを観察し見つけ出す能力が非常に発達しています。そのため、専門知識や経験だけでは感知できない細かい心配事が見えるために、「I型」の現地人を『質問攻め』に合わせます。そうすると、「I型」の現地人は、質問されている細かい点が全く見えていなかったので回答がしっかりとできないだけでなく、ある意味では、専門の知識と過去の経験に支えられた自分の意見が『最高のもの』と思っているので、「T型」の駐在員の心配事が理解できません。そして、「I型」の現地人は、教えてもらいたい専門的な知識とや経験は教えてもらえず、質問ばかりされ、「ケチ」ばかり付けられると思ってしまうようになります。確かに、上司なので従う姿勢は示すのですが、質問に対する的外れの回答をし続けるか、諦めて駐在員の言通りにするか、駐在員の方が疲れて折れるかと言う事態になるのが、残念ですが、通常です。

では、どのようにしてこのような状態を避けるべきなのかと言うと、「I型」の現地人に、この「I型」と「T型」の違いをまず説明することです。きっと知らないと思います。そして、専門の深さを示す縦棒(I)の長さは十分なので、多岐の分野に渡る幅の広さを示す横棒(一)をもっと長くすることが、一段上を行く(日本流の)マネージメントだと教えてあげることです。そうすることで、『何を教えるのか』を明確に示し、「I型」の現地人に駐在員の役割を理解してもらうことが一番大切です。『上司だから』の関係だけの繋がりから脱却した仕事の関係を作るためには、この「2.何か教えてもらいた」と言う要求をこの形で満たしてあげることが、駐在員の根本的な使命である現地人を成長させることに繋がると言えます。

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