3つ目の鍵=日本の文化についての知識

スペインに所在する日系企業で働いて来て、スペイン人から良く言われてきた言葉に、「日本人駐在員にスペインの文化(西洋文化)を教えてくれ」とか、「ここはスペインで、我々はスペイン人で、日本人ではないことを日本人駐在員に分からせてくれ」があります。そして、そんな依頼を受けた時、いつも、「それは、無意味で、効果のない間違いだよ」と言ってきました。 

今まで見て来た様に、スペイン人と日本人の間には『根(教育と生活)』からの違いが存在しています。そのため、日本人が、『本当に』スペイン文化、西洋文化を理解することは相当至難の業です。確かに、最近、スペインに赴任して来る前に、海外を経験してくる日本人駐在員は多くいます。そのため、『表面的』には、西洋文化を初めとする日本以外の国の文化を知っている日本人駐在員も多くいます。また、派遣する側の日本の親会社の人事担当も、時として、海外駐在経験者は、全て西洋文化や日本以外の国の文化を理解できる能力を持っていると信じ込む傾向があります。実際は、そんなに簡単なものではありません。先ほど「表面的には」と書いていますが、多くの場合、例えば、スペインに来る前に他の外国を経験してきたとしても、深く西洋文化を熟知してスペインに来ているとは思えない日本人駐在員だらけです。それには、色々な理由はあります。

まず一番の理由は、日本人駐在員は、会社のため、そして、会社に住んでいるからです。例えば、スペイン人(現地人)より先に帰る(退社する)日本人駐在員は何人いるのでしょうか?ほとんどの日本人駐在員は、誰よりも遅くまで会社に残っています。なぜ遅くまで会社に残るのかについては別の機会で話をするとして、イメージ的に言えば、海外にいながら日本に住んでいるようです。確かに、最近はこの傾向が少しずつ薄まって来ていますが、それもほんの少しで、ある『限られた人たち』だけに見られる傾向です。やはり、会社に入り浸りなのが、日本人駐在員です。最近は単身赴任も多く、「一人で家に帰ってもやることがない」と言い訳をしながら、会社に居残っている人を良く見ます。会社で働いている間は、『日本』と言う環境にドブッと浸かっています。日本人駐在員にとって、駐在は一時的なものなので、生活を楽しむよりも、任務を全うすることへの責任感が働いているのかも知れません。しかし、そのために、スペインないしはその他の西洋の国に住んでいながら、常に『日本』と言う環境にいることになります。当然のことで、責められるべきことではありません。特に、現在のようにインターネットが発達している状況下では、尚更『日本』と言う環境から離れる必要がありません。そのため、スペイン(西洋)文化と日本文化との間に存在するこれまでに書いてきたような『違い』を認識する機会を失っています。(経験しなくなっています。)認識しなくても、何も不自由もしなくなってきているからです。ですから、そんな日本人駐在員に、スペインに居る間にスペイン(西洋)文化をしっかり理解してもらおうと期待すること自体が、間違っているようにさえ思えます。

その上、日本人駐在員は、3年か5年でスペインを去っていきます。この意味は、例え『ある日本人駐在員』が大きな努力をしてやっとスペイン(西洋)文化を知ったとしても、直ぐにスペインを去り、そして何も知らないか、少ししか知らない他の駐在員が来ると言うことを意味しています。ですから、いつもスペイン人に、「新しい駐在員に再度スペイン(西洋)文化を知るように努力してもらうことを頼むべきなのか?」、「再度、駐在員に教える努力をするべきなのか?」と、問い掛けをして来ました。

勿論、スペイン(西洋)文化と日本文化との間に存在するこれまでに書いてきたような『違い』を認識してもらうようにお願いするとしても、その答えは、『いいえ』です。そしてスペイン人に、「なぜならば、(「日本人駐在員の学ぶ」、そして、「スペイン人の教える」)努力が報われないから」といつも言ってきました。やっと、日本人駐在員がスペイン(西洋)文化を理解してくれるようになったと思った時、例えば、3年後、ないしは、5年後に、スペインを去ってしまうのです。全の努力が水の泡になってしまいます。『大変な努力』を両者(日本人とスペイン人)がした割には、あまりにも悲しい結末です。「そんな努力を繰り返すのは、あまりにも非効率的で、むなしいことだ」と、スペイン人に言ってきました。

それならば、何をするべきなのでしょうか?

『犠牲(理解)』:

キー・ポイントは、頼むことでも、スペイン(西洋)文化教えることでもなく、『犠牲』を払って、日本人とはどんな生き物なのか、どのように物事を考えるのか、そして、どのように物事を評価するのかを、今まで話して来ているように、徹底的にスペイン人が学ぶ、スペイン人に学ばせることです。スペイン人がそれを学べば、例え日本人が去り、次の人が来たとしても、何も問題は起こりません。なぜなら、移動しない(立ち去らない)スペイン人が新しい人を受け入れる準備が出来ているからです。一回犠牲を払うだけで、十分です。例え、何年掛かっても問題はありません。スペイン人が学んだことは、日本人駐在員が交代しても、消えることなくスペイン人の知識、経験として残るからです。そして、その知識と経験が会社の「財産」となります。これが、「企業文化」の伝承に繋がる道だと考えます。しかし、残念なことに、今、欧州(例えば、スペイン)に進出している日系企業は、「やり方(型に嵌めること)」で管理できると考え、「企業文化」を伝承させるための前準備とも言える「日本と、例えば、スペイン」、「日本人とスペイン人」を教えようともしていません。教える必要があることにすら、気付いていないと言うのが悲しい現実かも知れません。

また、「日本と、例えば、スペイン」、「日本人とスペイン人」とは書いたものの、日本文化を深く理解してもらうことを意味するのではなく、『自分の会社』の「日本人とはどんな生き物なのか、どのように物事を考えるのか、そして、どのように物事を評価するのか」と言う独自の「企業文化」を学んでもらうことが一番大事です。

日系企業では、従業員は会社自体が教育、訓練をして勤める会社の企業人にしてくれます。つまり、会社独特の企業文化で従業員を育てると言えます。なぜならば、日本では、会社は部下を持つ「プロフェッショナル(専門家)」集団ではなく、弟子を持つ「職人(技人)」集団だからです。すなわち、会社は自らの学校を持ち、従業員教育を行うため、従業員は同じ行動をします。従って、例えば、働いている会社の企業文化を一度学べば、日本人駐在員の帰任や赴任を心配する必要がなくなります。なぜならば、確かに、学んだことがこの人にも通用するのかなと疑わせるような性格や個性の個人差があったとしても、皆同じように会社で企業文化を教えられてきているのです。ですから、スペイン人(現地人)が一旦学んだことは、全ての日本人駐在員に当て嵌まると言えます。

勿論、もしスペイン人(現地人)が、会社の企業文化を学ぶだけでなく、下記に説明されているようなスペイン(現地)と日本の文化的な違いをもっと知るようになれば、それこそ「鬼に金棒」になることは間違いないと考えます。

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